Subject: BS放送ハイビジョン

※もう無くなってしまった技術です。NHKが開発実用化を進めていましたが、DTVの出現で無用の長物となってしまいました。赤文字は今回追加した文面です。

参考資料

NHKの技術講習会に参加してきました。その中で現在BSで実験的に行われていてるハイビジョンの方式について説明を受けてきました。
将来性は薄いのですが、最新の技術を使ったこの方式に注目されていますこの方式は世界に先駆けて日本が開発利用したもので、日本放送協会(NHK放送技術研究所)が開発にあたったものです。

 MUSE方式の概要(Multiple sub-Nyquist Sumpling Encoding)

ハイビジョンによる映像を家庭に届ける放送方式には種々検討されてきました。この結果、全国的サービスの実現性、機器のコスト、技術開発の完成度から判断して放送衛星(BS)を伝送媒体として使うのが最良と判断されました。

放送衛星用の周波数帯域幅の割当は決まっています。現在使える12GHz帯では、日本はチャンネルあたり27MHzzで、変調方式はFMです。衛星の太陽電池(エネルギー源)の大きさが一定だから、送信エネルギー変動の少ない変調方式がよく、搬送波の振幅が変動する変調方式は適さないからです。

さらに、ハイビジョン1番組を放送するために衛星放送の複数のチャンネルを使うのは電波利用の経済性から考えて無駄があります。また、日本のチャンネル割当は、1チャンネルおきなので、不連続な複数のチャンネルをまとめて使うのは技術的にも困難です。このため単一チャンネル(帯域幅27MHz)とすることが必要です。(当時のアナログ放送のベースバンドは4.5MHzでした。)

ここで、変調方式をFMとすると、十分な周波数偏移をとるため、信号の帯域幅は、電波の帯域幅の約3分の1としなければならず、帯域幅27MHzの電波にFM方式で、ハイビジョン信号を伝送するには、ベースバンド帯域を9MHz以下にしなければなりません。

これは、FM変調における駒井-カーソン則と呼ばれる、法則に基ずくものです。この方式は次式で求める事ができます。

    (電波の帯域) = (周波数偏移) +2x (ベースバンド帯域)

 これは、FMの特質を生かし、十分なFM改善効果を得るには、周波数偏移をベースバンドの帯域より大きく設定しなければなりません。
またエンファシス(高域の変調)をかけた後の瞬時周波数が、電波の帯域内に入っていなければなりません。もしはみ出した場合その部分だけを抑圧してエンファシス後の瞬時周波数を電波の帯域内に入れるようにしています。このような方式をノンリニアエンファシスといいます。

ハイビジョン信号のベースバンド帯域は少なくとも20MHzが必要ですがこの信号を電波の帯域(27MHz)の1/3以下に帯域圧縮する必要が出てきます。ハイビジョンの伝送方式であるMUSEでは、8.1MHzにしています。

実際のベースバンド帯域は8.1MHzなのに解像度は20MHzの帯域のものと同等にしています。これを可能にしたのが3次元サブサンプリング技術です。テレビジョン信号の画素をサブサンプリングによって間引いて伝送するわけですが、水平、垂直、そして時間軸の方向にそれぞれ間引しています。

 さて、受信側ですが、この送られてきた画素から間引かれた画素を作る必要があります。これを内挿といいます。静止画像と動きのある画像それぞれに応じて内挿方法を適応的に切り替えます。

①静止部分の内挿
 静止している映像は前のフレームと同じですから、フレームメモリーを用意して、送られて画素はそのまま使用して、間引かれた部分1
 フレーム前の映像から内挿します。

②動き部分の内挿

 動きのある映像は前のフレームを使えませんので、第一フィールドは第一フィールドの画素だけ内挿しなければなりません。この場合
 格画素の周囲の画素との相関を利用して内挿します。静止部分と比べると解像度が低下しますが人間の目も動画については視感度も
 低下しますので問題になりません。

③一様に動く画像の内挿
 カメラをパンまたはチルトしたとき、画像は一様に動きますが人間の目は対象物を追いかけます。このとき動画の様な処理を行うと
 解像度の低下が目立ちます。これに対応するため対象物がどの方向にどの程度動くかをあらかじめ信号で伝送し(これを動きベクトルと
 呼ぶ)、受信側ではこの信号により対象物の位置を静止画処理を用いながら移動させます。このようにして解像度低下を防いでいます。

 MUSEの信号処理はデジタルですが伝送はアナログです。MUSEは3次元サブサンプリングを行っているわけですから、元の映像を復元するにはサンプリング周波数はもちろん、サンプリング位相まで統一する必要があります。このような伝送技術を「サンプル値アナログ伝送」といいます。

BTA(放送技術開発協議会)のスタジオ規格

フレーム当たり走査線数:
1125
フレーム当たり有効走査線数:
1035
インターレース比:
2:1
アスベクト比:
16:9(画面が横長)
フィールド周波数(Hz):
60.00
ライン周波数(Hz):
33750
公称映像信号帯域(MHz):
30
デジタルサンプリングY,G:
74.25
周波数(MHz)Pb/B,Pr/R:
37.125/74.25

現行テレビとの比較

 
ハイビジョン
アナログテレビ
PAL/SECAM
走査線数
1125
525
625
アスベクト比
16:9
4:3
4:3
インターレース比
2:1
2:1
2:1
(飛び越し走査)  
 
 
フィールド周波数
60Hz
59.9Hz
50Hz
(毎秒画像数)  
 
 
映像信号帯域幅
20MHz
4.2MHz
6MHz
音声信号変調方式
PCM
FM
FM