IC-780受信の不具合

 IC-780購入して20年近くになりますが、比較的元気に動いてくれていました。強いて言えば50W改造後に、メモリーのバックアップ電池を交換した以外はこれと言って、不具合は起きておりませんでした。

 その日は朝からものすごい雨と雷。しかしながら 18MHz の FT8 は普段と変わらず良く聞こえておりました。 仕事に行く時間にはその雨と雷も収まり、天候が回復するような兆しの中、780の電源を OFF にするのを忘れて出勤してしまいました。
  帰宅して電源をONしようとすると、既にONになっており、「ああまた付けっぱでいっちまったか」と。(時々消さずに仕事に出てしまうことがあった。)PC立ち上げて、FT8 を眺めると、いつも賑やかな時間なのにやたらと、信号がデコードしていない。「あれ?」と思い、仕方なく Bright あげると、(FT8 の時はモニターを見る必要が無いので、Bright を下げてあります。なので電源の消し忘れしてしまうのです。)バンドスコープがまっすぐな、横線。まず先にアンテナがコケたかなと、バンドを切り替えて 7MHz に行くとやっぱり受信感度が悪い。ATTかPRE AMP のスイッチかとカチカチしてみたけど変わらない。28MHz に移動して7エレを隣の家の屋根に向けても太陽光ノイズが最大にならず。「これは受信逝ったな」と思わずめんどくさいなと。
  今までに何度となく OFF し忘れと言う事はありましたがこんな事はなかったので、雷でもなんでもなく単に壊れたいから壊れた感じ。今まで故障しなかった方が奇跡なので、壊れて当たり前かなとは思っていました。

受信はするが感度が悪い

 さて修理・・・と考えると気が重い。それはこの RIG 重量が 23Kg もあり、重たいから。引っ張り出すのも容易ではないですし、まして修理となると、裏にしたり、表にしたりとしなければならず、これ如何に。みたいな感じに・・。 どちらにしてもこれが無いとHFの運用もままならないので修理する事に。まずはサービスマニュアルを引っ張り出して、受信の初段があるRF UNIT を確認。 ブロックダイアグラムで受信の初段を捜すとすぐに見つけることができました。
 ※サービスマニュアルは IC-780/IC-R9000を購入した時に、10年以上経過した際に「修理不能」で、出来ない事があるだろうと、頂いておりました。(購入当時 Icomさんの担当営業と仲が良かったので出来た技でございます。)通常は出来ませんよ。

すぐ解ります。これが受信の初段
そして場所はここ

交換前に、サービスマニュアルで各部の電圧をチェック、再調整し、規定値にします。それでも感度は変わりません。(当たり前ですけど)

サービスマニュアルで電圧確認
メインダイアル解体

 一通りやりましたが、やはり感度が通常より約 -15dB 低いようです。なぜ、初段なのかは、ブロック図を見て頂ければ、この初段の後に Dual Wach 用のユニット2つに分配される用になっています。A/B Dual Wach してもどちらも悪いので、簡単な結論からこいつらだろうと。交換する目的を定めました。が、考えが甘かった。
 それとメインダイアルが重たいので、メカに注油します。IC-780はばらさなくても、メインダイアルの機構はバラパラに出来ます。(R9000はダイヤル自体にロック機構があるので駄目でした。)

FET交換

 2SK125 の手持ちの在庫が無かったのでダメ元で Yahooオークションで検索するとすぐHIT。10個2Kでしたが Idssを揃えたものだからいいかなと。いろいろお安いのはありましたけど、安心を選んで落札。

 3日くらいで物も無事到着し早速RF UNIT の FETを交換します。このユニットの注意点として。手前の同軸(下の左側写真参考に)はずすと、写真(右)のようになります。ある程度回すと外れますがその際スペーサーも一緒に付きます。ただ回しすぎると、スペーサーが下に残ってしまいます。もし外してしまった場合は基板側にねじいれで回ながらスペーサーを取り付けると写真のようになります。この後本体に戻せばOK。

丸印の同軸。(再取り付けの際は左右間違えないように)
矢印がスペーサー

 交換する場所は解っていますが、慣れていないとハンダ面がどれなのか結構解らないときがあります。サービスマニュアルにはパターン図もありますので、併用すると解りやすいです。

○印がQ13,14の足

 交換して、FETをチェッカーに掛けると、あーら残念。ハズレでした、正常です。外した物をまた付けるのもいいんですが、せっかく外したから新品に交換。さーて次なる場所と言えばあとは RX 1st Mixer しかねーな。ここで問題なのですが、実はこのユニット、基板の上に実装されている基板の中なのです。一番やりたくない場所でもあります。

このユニットをはずさないとならない
裏は上のシールド版を外さないと駄目

 一応ここで間違いないのか、再度マニュアルで記載されている電圧確認します。ここ、予想外(というかやりたくない)の場所だったのでチェックしていませんでした・・・。回路図の測定値を当たっていきます。FETの足にテスターを当てると、ノイズが増えます。このユニット内で間違いなさそうですが、さてどれか・・・。といきなり発見・・赤いラインに13V前後掛かっていないといけないのですが 0V です。

赤線とQ304/Q404が0V
残念ハズレ(正常)

 このラインにはQ302/303,Q402/403 があり、飛んでいる可能性・・もしかするととQ304/Q404が起因している気もする。ということでやりたくないけどこのユニットを外しました。最初は基板だけ外れてこねーかなーと言う淡い期待をして、基板だけハンダを外してみましたが、外れず。ま当然シールドもハンダしてるよな・・・と(当たり前ですね)。

30分ほど掛けてやっと外しました。もういいですw

次のターゲットはこいつら(Q304,404)
外しました

 まずQ304,404を外して早速テスターに当てます。なんと「ビンゴー」です。どっちも抵抗化していますので電圧が出なかったのはこいつのおかげだったようです。それ以外のユニット内0VだったQ302,303,402,403 のFETとトランジスタと外して、影響受けていないか確認しましたが、問題なかったのでここはそのまま元に戻し、不良のFETを交換。

間違いなく壊れています

こちらも

 そしてまた基板の上に戻していくのですが、このユニットの装着が結構難しいのなんの。無理矢理入れると、基板から出ているリードが曲がる。すったもんだしましたが、なんとか元に戻し、とりあえずそのまま電源を入れると、懐かしいノイズの音。元に戻りました。18MHz CW に出ていた DU1IST/9 も強力です。修理してる最中にふたを開けたままコール。1~2回呼んだらリターンしてきました。受信も大丈夫なようです。飛びも変わらないですね。 (当たり前ですね)

正常に戻りました。

 ようやく蓋ををしめて元通りに。また元の位置にもどしました。修理に1週間近く掛けましたが、もっと早く修理しようと思えばできたと思います。単に重たくてその気にならなかったって言うのが大きな理由ですかね。部品は比較的早く入手出来ましたし、またそれ以外の部品もストックもしているので楽でした。

サービスマニュアルについて
webで捜すと、英文マニュアルは沢山見つかりますね。IC-781で検索すると良いでしょう。IC-780は日本名なので、海外の場合は型式変わります。781も780も大差有りません。調整が絡むと日本語の方が良いときもありますが、大体が英語版で用は足ります。数字と設定が解ればいいだけなので。
  また、あまり電子工作や製作、ハンダこてを始めて握るとか、あまりやったこと無い人には正直無理です。返って被害が拡大するのが関の山なので、初心者が修理出来るような代物じゃ無いって事を理解して下さい。また故障は全て同じとは限りません。ここに乗っていたからやってみたけど変わらんかった!って言うのはお門違いです。状態症状で修理する場所は全く違います。そのことを理解して頂きたい。
また、回路もある程度理解して居ないとピンポイントで修理っていうのも無理ですので止めましょう。よく素人さんが触ってパーターンを剥がしてしまったり、スルホールを抜いてしまったりする方いらっしゃいますが、その時点で修理受付できる機種でもNGになります。
 修理受付してくれる無線機は自分で触らずに素直に修理に出しましょう。最近解らないのに触る人が多いです。メーカーもそうですが個人が改造したり、修理失敗したものは扱いません。私も同じです。だって何のためにそんなことをやったのか解らないし、波及していたら手に負えないですからね。

 話しが飛んじゃいました。日本語のサービスマニュアルですが、相談に乗りますので mail 下さい。 call at jarl.com です。(この意味が解らない方はご遠慮下さい)また、当然ですが IC-780のオーナーで有ることが条件となります。ジャンク/中古を買う予定とか一応貰っておこう。というのは却下致します。オーナーであるという証拠と一緒にメールをして下さい。

 

改版履歴
2021年04月01日 文面若干修正
2020年05月13日 写真のLINK切れその他修正
2018年10月18日 ちょっと修正
2018年09月02日 新規作成